『医学は科学ではない (ちくま新書)』米山公啓

(臨床)医学は、条件*1を完全に一致させることができないから再現性を持たない、故に厳密な意味での科学ではない、という指摘は全くもってその通り。そこを大数の法則で乗り越えようとしている訳である。

代替医療の効き目がたとえプラシーボ効果だとしても、その効果を患者が信じられるなら、信用がおけない医者から薬をもらって「こんな薬は効かない」と思っているよりは、まだメリットがあるかもしれない

といった指摘も確かにその通りかも、と思わせる。
その他の問題点についても、着眼点は正しい、と思ったが、いかんせんその分析が少しお粗末である。
例えばこんな下り

アメリカが医学の最先端にいても、国民の平均の寿命が日本より劣っている理由は、アメリカは多くの民族を受け入れて医療を行っているからだ。

ここでは、生活習慣だとか、その最先端を誰もが受けられないから、といった可能性を無視している。
他にもこのような記述が散見されて、共同幻想である「医学」の新しいルールを作る必要があるのではないか、という大筋には同意したいのだが、その論証の部分では納得できない点が多かった。

*1:患者と医者の組み合わせやその他の状況