銭のなる木

 http://www.isoukai.jp/expo/を見てきた。大阪城ホールでは生HAL(Hybrid Assistive Limb)が見られて感激である。
 いくつかの会場に分かれていた中に、健康食品やアンチエージングといった商品を取り扱っている会場があった。糖尿病患者むけワインのような変わったものも見られて面白かったんだが、あやしげな健康食品や水のデモもなされていた。
 そこでの会話を一部再現してみる。

  • コラーゲン

販売員:コラーゲンは皮膚や軟骨など多く含まれており[…]美容と健康のために多く摂取しましょう。
私:たんぱく質が身体に吸収されるのはアミノ酸に分解されてからですよね。コラーゲンも分子量の大きなたんぱく質だと思いますが、本当にコラーゲンをとると身体に行き渡るんでしょうか?

 私の聞いたことについてはhttp://www.ajinomoto.co.jp/amino/aminosan/kids/reason/contents_frame_q13.htmlを見ていただけると一目瞭然だろう。そして、コラーゲンは下の絵のように長いアミノ酸の鎖が巻きつく形の巨大な分子である。

http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Collagen.gif

販売員:その辺はきちんと立証されているわけではないですけど、でもウチのは医者が作った上に、学会認定も受けてますよ[…]
私:学会認定ってどういうことなんでしょうか?
販売員:えーとですね……アンチエイジングの学会が……ちょっと試食してみませんか?

 この辺で、自分たちで作ったものを自分たちで認証するということをやっているんじゃないかという疑問が沸いたが、ゼリーは美味しかったんで立ち去った。
 コラーゲンはレゴブロックで作られたお城にたとえられるだろう。それを一度ぶち壊した後で、簡単に作られるものなのかどうなのか。

  • お茶

販売員:このように、ラットに対してエサとまぜて摂取させるとこのお茶は脂肪燃焼をするんですよ。
私:人間が飲む場合、一回の食事にどれくらいの量をお茶で飲めばいいんですか?
販売員:……うーん……リットル単位ですかね……

  • 水1

販売員:この水は〜大学で研究されているんですよ。活性酸素を消す働きのある〜がプラチナとくっついて水の中に溶け込んでいるんです。
私:どうやって検証したんですか?
販売員:それはですね。試験管の中に活性酸素を入れて、そこにこの水をふりかけると活性酸素が消えたんです。
私:普通の水と比べてという実験はなさっているんですか?
販売員:その辺りは〜大学で研究されているんです。まだまだ未解明ですけど、活性酸素を消すんです。

  • 水2

販売員:この水は植物に含まれている水や羊水(赤ん坊がプカプカ浮いている液体)のような生命が生まれる水を研究する過程で生まれたんです。
私:何が含まれているんですか?
販売員:〜という物質です。これは太古の生命が生まれた海水にも含まれていた成分で。
私:といっても、そのころの海水には他にも大量の金属イオンが含まれていた筈ですよね。その物質を選んだ根拠はなんですか?
販売員:その辺りはまだ科学的に解明されていません。でも見てください。この水で炊いたご飯は腐らないんですよ。ところで、この水で作った飲み物を飲みませんか?この水だけでなく、いろんな果物酢が含まれていますよ。

 腐らないパンといえばヤマパンで、腐らないご飯を果たして「身体に良い」と言い切っていいのやら。

  • 水3

販売員:ウチは〜という見本市で賞を貰ったんです。
私:おたくの製品はどこが優れているんですか?
販売員:飲むとおしっこが良く出るんです。そうすると……「デトックス」ってご存知ですか?
私:水にとかして毒を体外に出そうという考えですよね。
販売員:そうです。おしっこから多くの毒を出すんです。
私:そうすると、おしっこがいっぱい出るということは、利尿剤と同じ働きということですか?
販売員:そんなことはありません。ウチの水にはそのような化学物質は含まれていません。
私:じゃあ、どうやっておしっこが出ることを検証したんですか?
販売員:それは飲んでいただいたお客様から言われていることです。
私:でも、普段ミネラルウォーターを飲む習慣のない人が水を飲んだら、おしっこに行きたくなるのは当たり前だと思うんですが。普通の水道水を飲んだ場合と比べたりしたんですか。
販売員:そのようなことは行っておりません。でも、飲んでいただいたお客様から体調が良くなったと言われています。

 こーゆーのをプラセボ(偽薬)効果と呼ぶ。

  • 赤外線

販売員:岩盤浴は駄目です。音叉に共鳴があるように、赤外線にも共鳴があります。岩盤浴は石のような生体と違うものを使っています。ウチは〜という物質を使っていますから[…]
私:それで、実際には何が違うんですか?
販売員:同じ時間入っていても、汗の出方が違うんです。
私:温度計で測るとどうなるんでしょう?
販売員:同じです。でも汗が多く出るんです。
私:汗が多く出るといいことがあるんですか?
販売員:汗によって、体からいろんな有害物質が出て行きます。キレート剤なんかを飲むのは意味ないですよ。あれは、元々食品に含まれている有害物質のことを考えていませんから。口から悪いものを取り入れていたら、それが排泄物に含まれているのは当然でしょ。ウチのは違いますよ。あのノーベル賞をとった田中さんが所属している島津製作所に汗を計測してもらいましたから。なんとダイオキシンが含まれていたんです。
私:それはどれくらい含まれていたんですか?
販売員:[忘れた。ものすごく微量だった]です。
私:へー。それは凄いですね。普通の汗と比べて違いはあるんですか?
販売員:微量なものですから、実は一回測定するのに300万円もかかるんですよ。だから、その一回しか測っていません。

 オマケとしてダイオキシンについてはここなどを。

  • まとめ

 結局のところ、どこもコントロールを置いていない実験ばかり(お茶は除く)。この手の情報に接するときには何万円も払う前に、まず「何と比べて効果があったのか」をチェックするといいだろう。たいていの場合比べるものが何もない。
 あと、レトリックというか、正しいものの根拠としては

    • 昔は良かった
    • 自然は良い
    • 権威
    • 他のものをけなす

といったあたりか。こういうイメージ戦略は参考にせにゃならんだろうな。
 まぁ、久々の休日に楽しい思いができた。