祭囃し

読了。
ネタバレ注意!

カケラを紡ぐことの困難さと、初めて登場した選択というゲーム性が合っているなぁとか思いつつ、解決への道をたどる。
その先に見えたものというか、作者があとがきで語りすぎてしまっている「システム」そのものの是非は置いておく。
私にとって一つ問題だったのは、その「システム」の適応され方である。「システム」やその他の前提となるあれこれを「現実」に外挿することで、一つの話が作られていくのに異存はない。つまり、「もしもボックス」で電話をかけることはいいと思う。しかし、その「もしもボックス」が故障していて、何も言っていないのに勝手に動き、人が死ぬ世界をどうころんでも傷つかない世界に変えてしまったなら、リコールを主張することは間違っていないだろう。間違えた。これは勝手な思い込み。
「システム」の力が強すぎて、どこまでいっても、キャラクターが「システム」に守られる世界を作ってしまった。要は、これまでの人が死ぬ(と私が思い込んでいた)世界と本作に登場したキャラクターが全く傷つかない世界の齟齬*1が違和感の原因だったのだと思う。
この作品が特異なところは、読者が作者になりかわって、あるべき祭囃しを構築することが奨励されていることである。つまり、文句あるなら代案を見せろと。ここで、真犯人と神様の持つ思いの戦いは、作者と読者の妄想力の戦いへと変化する。
オッカムの剃刀を持ち出して、最節約基準で説明しろと思うなら、それは各人が行えばいい。徹甲弾や固有結界やザ・ワールドなんかを持ち出さないと上手く着地しないのはおかしいと思うなら、その方法を自分で考えろということ。
これを責任放棄ととらえてもいいとは思う。だが、わざわざ作者への反論を織り込み済みで発表するのはスタッフルームにもあったように、読者にものを作ってもらいたいという作者の思いの表れということでいいんではなかろうか。
=壮大な釣り説

*1:リアリティのレベルの差とも言えるか。