イリアム (海外SFノヴェルズ)

イリアム (海外SFノヴェルズ)

上巻を読了。下巻の『オリュンポス』は来年発売だそうな。
下巻を読むころには、はられた伏線を忘れている自分が予想できて、これから読もうという人には来年まで待つことをオススメしたいかも。単体で読んでも間違いなく傑作ではあるんだけど。
本書は3つの物語が同時進行する形で語られる。管理された未来人たちの話、トロイア戦争を観察する学者の話、そして火星探査をする半生物機械たちの話である。
次に読むときのために個人的なメモをしとくと、半生物機械であるモラヴェックの二人のパートでは、延々とシェイクスピアプルーストについて議論が交わされる。
その中で、『失われた時をもとめて』の登場人物が「人間であるとはどういうことかという謎への執着」を解こうとしたという話が出てくる。貴族性、愛情、芸術の三つのアプローチは失敗する。成功した第四の方法として書かれている箇所を孫引きする。

見知らぬ地を旅することにではなく、新しいものの見方を身につけることによって得られる。別人の目で―それも一〇〇人もの別人の目で宇宙を観ることによって得られる。その一〇〇人のそれぞれが観ている一〇〇の宇宙、すなわち個人そのものである宇宙を見ることによって得られる。

これはまさに物語を楽しむことではないかと思う。この方法を下巻の中でどう「証明」するのか楽しみである。
いくつか気づいたことなど。断熱スキンは戦隊ヒーローのコスプレで、モラヴェックはタチコマ的な萌えキャラなのではないかと思う。