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- 作者: 三中信宏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/07/19
- メディア: 新書
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『竜とわれらの時代』では、恐竜の系統樹を推定しても「正解」はないから、各時代における環境を考えた方が生産的ではないかということになっていた。
それに対する答えはないかということでこの本を読んだんだけど、祖先子関係は原理的に不可知であると書かれている一方で、推定の方法である「最節約基準*1」は「真実」であることを保証する訳ではない。でも、それが「歴史科学」の基本的性格だから受け止めないといけない。としか書かれていなかった。ではどうして系統樹を作るのかという理由に関してはトートロジーになっている。
最節約基準については、その蓋然性が高ければ妥当であるという風に考えろということだと思う。
本書によるとそういう思考形式を帰納(induction)でも演繹(deduction)でもないabduction*2という風に言うらしい。
前提1 データDがある。
前提2 ある仮説HはデータDを説明できる。
前提3 H以外の対立仮説H'はHほどうまくDを説明できない
結論 したがって、仮説Hを受け入れる
という形式である。
その前提として、「そもそも特定の仮説を選び出す必要性があるかどうかを検討すること」とあるのが私の疑問。
この参考文献をまた暇ができたときにでも読んでみよう。
abductionの良い例として、牛乳やコーヒーの場合がある。
これって、データDが網羅的ではないことからおこるのである。本書の言葉を使うなら、「タイプ*3」ではなく「トークン*4」としてのヒトのデータから、abductionしていることがその理由。
表紙の裏になつかしのセフィロトの樹があったりしてなごんだ。ここだけでも立ち読みする価値は一部の人にとってはあるのかも。