オリバー・ツイスト

ロウアークラスから見た、すなわちメイドのいないヴィクトリア朝の風景。
セット・衣装とも細部まで作りこまれていたし、スリの実演など、なかなか見られないもシーンも多く、その辺りは期待通りだった。
ストーリーについてであるが、結局の所どうしてオリバーが幸福を手に入れられたのかよく分からなかった。原作を読んだことがないので、脚本化するとき省略によって起こったことなのだろうと想像するけど、映画をそのまま解釈するなら、オリバーって単に運命に流されていただけではないのか。
非力でさして機転が利くわけでもない。何か理想を持っているということもなく、ただ消極的な判断で世を過ごしている。貧救院から追放されたのは、単なるくじ運であるし、窃盗団員から金持ちの養子になれたのもラッキーだよなと。唯一の努力は、泥水をすすりながらの70マイル単独徒歩踏破である。でもロンドンに行ってから、もう少しなにかできたのではないだろうか。「またうど」属性もなかったように思う。
どうして10歳児の行動にわざわざ文句をつけているかというと、一番まともな働きをしたナンシーを殺してしまうドラマツルギーに釈然としなかっただけなのだが。