「数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活―病院や裁判で統計にだまされないために」ゲルト・ギーゲレンツァー

リスクを考える際には、自然頻度で考えろ。その思考形態を身に付けるには、我々の開発した学習プログラムを使え。というだけのことを言う為に、324ページもかけている。
でも、以下の問題が解けるなら、そんな学習プログラムは不要。

40歳の女性が、乳癌にかかる確率は1%
乳癌である人が、乳房X線検査で陽性と出る確率は90%
本当は乳癌でなくても、検査で陽性と出る確率は9%
あなたが40歳の女性で、検査結果が陽性だったとしたら、あなたが乳癌である確率はどれくらい?

答え:およそ9%。90%ではない。
私はベイツの法則は知らなかったが、2×3の表を書いて解いた。だからといって本書を読んだのが無駄だったか、というとそうでもなく、取り上げられている乳癌検診であるとか、DNA鑑定についての薀蓄や情報伝達の方法に関する示唆は、かなり興味深かった。何よりもこの問題をドイツ人医師に解かした所、24人中4人しか解けなかったって……。
あと、本書で驚いたのは、以下のようなヒポクラテスによるプラセボ治療のすすめだった。

すべての務めを穏やかに、巧みに遂行し、患者を治療するに際してはほとんどの事柄を隠しておきなさい。明るく穏やかに必要な命令を与え、患者の関心を治療からそらしなさい。ときには厳しく熱をこめて叱ることも、こまやかな心遣いを示すことも必要だが、患者の未来や現在の状況については、何も教えてはいけない。