「マンガの深読み、大人読み」 夏目房之介

マンガの読み方と一口に言ってもイロイロなものがある。1部はその証明であり、すべて切り口が違っている。模写だったり、都市論だったり、視覚野の話だったりする訳である。
手塚治虫が戦前のマンガをきちんと継承している、という話は「comic新現実―大塚英志プロデュース (Vol.1) (単行本コミックス)」のみなもと太郎のインタビューも参考になるかと思う。「昭和十四、五年くらいから、一切まんががない時代というのがあるわけです」とあって、その時代にも「ボンボン」だった手塚はしっかりとマンガを読んでいたという話。
「マンガと科学?」も興味深い、絵で「萌え」る瞬間に脳のどこが活性化しているのか、だれかfMRIを用いて研究してくれないか、と思うのである*1。勿論それが分かったからといって、キャラ作りに応用したりはできないだろうけれど。

2部は「あしたのジョー」&「巨人の星」徹底分析。リアルタイムで経験していない以上、分からないことだらけだけれど、当時のマガジン編集部には何かがあったのだろう。これは上記のインタビューからも伺えることである。あと、作品論からは著者の愛が伝わってきて、本書の中では一番読み応えがあった。「巨人の星」を読んだのは中学の頃で、その頃はこんなに凝った構図で描いているとは気づかなかった。是非、再読してみたいものである。

3部は海外事情と、その対比から浮かび上がる日本のマンガ産業について。国内市場が人口の伸びなどを考えても頭打ちである以上、海外でも売る必要があるというのは、当然のこととなろうか。

自身のマンガ論の再構成であるという「マンガ学への挑戦―進化する批評地図 NTT出版ライブラリーレゾナント003」も楽しみだ。

追記)偶然って怖いもので、ちょうどCSで「漫画映画の世界」という番組を放送していた。ぐにゃぐにゃと伸びたり曲がったりする身体は見ていて飽きなかった。何よりも吃驚したのは、「オモチャ箱シリーズ第3話 絵本1936年」に出てきたミ○キーマウスvs日本の昔話キャラという構図で、時代背景なのかなぁ。

*1:おそらく紡錘状回と扁桃体がからんでいる筈