「水晶内制度」作:笙野頼子 isbn:4103976047
確か、大塚英志とこの方との論争のお陰で、文学フリマができたわけで、更に「タンデムローターの方法論」が作られることになったのである。そういう意味で、非常に感謝している。
で、初めて読んでみた。
内容は、ウラミズモという架空の国について「吉里吉里人」みたく、そこに紛れ込んだ作家を主人公として、その国のイロイロを描写するというもの。
古事記を「女の側」からの視点で読み替えていくあたりは、「家畜人ヤプー」と同様の方法論で、なかなか面白い。自分が作った神話を自分で使うことで、自分の狂気に普遍性を与えたかった、と主人公に言わせているし、分かった上でやっているみたいである。
圧巻なのは、ロリコン男性を飼育する下り、日本で幼女殺人や連続して幼女を犯した犯罪者が、10年間少女に監禁・飼育され、最後に幼女フィギュアパーツで圧殺される。ここを読むだけで、買った価値はあったかも。

全編に男社会に対する怨念が渦巻いていて、正直なところ男子学生としては、共感を持って読むことは出来なかった。ただ、これ程の作品を作る原動力となったのだから余程酷い経験をしたのだろうと「予期」することは可能であろうか。
3章まではそういうノリであったのが、4章に入って人形愛が出て来る辺りから、俄然面白くなり、最後の着地点にたどり着くまでの過程は小説として非常に楽しめた。
もしこれから読もうという人がいれば、途中が退屈でも最後まで我慢することをオススメします。