立喰師列伝」 作:押井守 isbn:4048735160
連載中のイラストと題字は寺田克也の手によるものであったと記憶するが、単行本では写真になっている。
「月見の銀二」の吉祥寺怪人とはいかなる人物か不明である。おそらくは、他のモデル同様、押井守の知人であろうか。イメージとしては、「ハンバーガーの哲」の川井憲次が一番はまり役かと思われた。
本作は、立喰師という架空の存在を狂言回しとして、戦後の歴史を語ろうとする試みというよりは、立食いに対する作者の愛の発露であろう。先行作品に於いて、立食いは繰り返し描かれるモチーフであり、意地汚い食いっぷりも頻繁に出てくる。

未完で終わっていることについては、「よろしく御推察」してみると、単に映画の方が忙しくなったのか、アンケートの結果が悪かったのか。

いずれにせよ、薀蓄が好きで食い気があれば、文句なしに楽しめると思う。