ディシプリン

今日解いた問題。

101D37
31歳の妊婦。性器出血を主訴に来院した。
現病歴:妊娠28週時に無痛性の少量性器出血を認めたが、自然に止血したため放置していた。妊娠29週6日、排尿後に凝血槐を混じた中等量の性器出血があり入院となった。妊娠初期の血液検査と子宮頸部細胞診とで異常を認めなかった。腹痛はない。
既往歴:4回経妊、2回経産、2回流産。27歳時に第2子を回旋異常のため緊急帝王切開で分娩した。
現症:意識は清明。顔貌は正常。身長 160cm、体重 67kg。体温 36.4℃。呼吸数 18/分。脈拍 84/分、整。血圧 118/72mmHg。胸部に異常はない。両下腿の脛骨稜に浮腫はない。子宮底長 28cm。胎児は第2頭位。腟鏡診で子宮腟部は紫藍色を呈し、外子宮口から少量の出血がみられる。子宮頚部は軟で、子宮口の開大は認めない。内診では児頭を明確に触れず、腟円蓋部と児頭との間に柔軟・弾力性の海綿様組織を触れる。来院時の胎児心拍陣痛図で心拍数は 130-140/分で、体動に伴う一過性頻脈がある。子宮収縮を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白 +1、糖(-)、潜血 1+。血液所見:赤血球 342万、Hb 9.8g/dl、Ht 27%、白血球 11,600、血小板 28万。CRP 0.1mg/dl。

診断に最も有用なのはどれか。
a 腹部エックス線単純撮影
b 腹部単純CT
c 経腟超音波
d コルポスコピィ
e 腹部MRI

あまり時間的余裕がないので、推理はすっとばして犯人だけ指摘するとこうなる。
帝王切開の既往のある妊娠で前置胎盤
その確定診断に使えるのはcかe。
で、答えはおそらくe。
なぜなら、癒着胎盤があることが「分かるかもしれない」から。

ちょうど一年前、福島で産婦人科医が逮捕された。現在も公判中であるが、争点の一つが癒着胎盤を予見できたかどうか。詳しくはここなどを。
問題を作った人の意図が、「みなさん、こうしなさい。さもないと大変なことになりますよ」という親切心なのか、それとも公判中の事件に対して「背後から撃とう」とする所にあるのか分からない。会場で聞いた嘘か本当か不明な噂として、検討委員会で出題委員の某産婦人科教授が激怒した一幕があったらしい。

少なくとも、私が知りえた範囲の情報から判断して。

我々は福島事件で逮捕された産婦人科医の無実を信じ支援します。
2007-02-18

追記)トーンダウン。
 ネットでの答え合わせを見てみる限り、

  • MRIは胎児への影響を完全には否定できない
  • もし選ぶんだったら「腹部」ではなく「骨盤部」だろう

という二つの理由からcを選ぶ意見が主流である。これは公式の答え待ち。

追記2)ほっ
公式の解答を見たらcだった。