蒲生邸事件 (カッパ・ノベルス)

蒲生邸事件 (カッパ・ノベルス)

 第18回日本SF大賞受賞作*1
 受験に失敗し、予備校を受けようと上京してきた主人公。ホテルの火災に巻き込まれ、昭和11年へと時間を移動する。そこで主人公の見たものは。 
 徹頭徹尾、2.26事件に対する知識のない主人公の目線で書いてあるから、知識がなくとも読むことができる。しかし、主人公にとって自明のものである東京の地理はさっぱり分からないのだった。
 特に時間ものとしての面白さはなくて、ミステリーとしての謎解きも半ば放棄している。それでもこの本が面白いのは、きちっとした教養小説として書かれているからだと思う。
 そういえば、歴史に対する後だしじゃんけんと、それを拒否する態度としての「いまここを生きる」こと*2については、もうちょっとつっこめたのかも。

*1:なぜ?

*2:主人公にとっての成長の一つ