『忘れないと誓ったぼくがいた』

前作の不思議な味わいはかなり減って、明確に<泣き>を指向した作品になっていると思う。
ヒロインはある日突然、自分が<消え>ることを体験するようになる。それとともに彼女の周りにいる人間は、彼女に関する記憶をなくしていく。その<現象>に対抗して、ヒロインを自身の<記憶>に留めようとする主人公が孤軍奮闘することになるのだが、読んでいて『サマー/タイム/トラベラー』を思い出した。
しかし、その<現象>に対する考察がほとんどなく*1、本当にただ<消え>ていくだけなので<泣け>なかった場合には、だから何となってしまう。
唯一面白そうに感じたのは、ビデオやノートという形から得た<知識>と体験によって得た<記憶>の差についての下りだけど、そこも要素として入っているだけで、主題にはなっていないのだよな。
その内、映画化・ドラマ化されるといいのではないだろうか?
追記:作者インタビュー

この話の中では、現実にはありえない不思議な現象が起こります。でも、その現象に巻き込まれたあずさやタカシの感じるせつなさやさびしさそのものは、きっと老若男女どなたでも「身に覚えのある」ことなんじゃないかと思います。

だからか!

*1:「彼女の方が大人びていた」のは何かの伏線だと思っていた。