『ファイナルシーカー レスキューウイングス (MF文庫J)』

RESCUE WINGSという名前でメディアミックスをやっているものの小説版。「よみがえる空」とは、小松が舞台で救難隊が主役であること以外の共通点はない。マンガ版も見かけたが、斜め読みしてみて食指が動かなかった。
この一連の作品群の制作に自衛隊の広報はどの程度かんでいるんだろうか?世代ごとの人気スポーツが分かれる理由の一つとして、種々のマンガやらアニメやらが挙げられるからには、方向性は間違っていない、と思う*1
『千マイル』は微妙だったけど、こちらは小川一水のこの方向での代表作にしてもいいかと。贅沢なことを言えば、『老ヴォール』みたいな浮世離れした話をもっと読みたいのだけども。
さて、最後は小説としてのハッピーエンドにはなっているが、倫理的課題は残っている。もし、艦長が最後まで救出を求めるなかったとしたら、この作品の結末はどうなっていたか。つまりは、助かりたくない人間を助けることは果たして許されるのか、ということ。
これはそのまま、他人の自殺を止めることは許されるのか、という問いにもなる。例えば、うつ病であったりして、「正常な」判断ができないならば、それは可能。でも、そうでなかったら。
ちなみに、この作品にも「キャッチング」が出てくる。屈強な救難員が2人がかりで小学生を救い上げる、というシチュエーション。これなら可能な気もする。転換点となる重要なシーンである。

*1:そういえば、『ぼくらの』にハミングバードから自衛隊に入ったという隊員が出ていた。