「ゴーディーサンディー」照下土竜

監視装置が日本中に張り巡らされ、それをかいくぐって犯罪を行うには内臓を改造する必要が出てきた、という設定は物語の為の設定だろう。パプティノミコンとは、みたいな話にはならず、文字通り血みどろの警察官とテロ組織の駆け引きが描かれるのである。
主人公に近づいた女が実は……、というのは十年一日かと。そもそもこいつらは本気で擬態内臓を取り出して、助けようとしているのだろうか*1、とかいろいろ疑問はあるけれどおいておく。
主人公の他人に対する視線と解体シーンの解剖学的な描写がこの作品の魅力だ、と思う。特にヒロインに相対する際の表現は、確かにラブストーリーしている。
よく調べているのは伝わってくるのだが、解体シーンに関して文句を言ってみる。
吐瀉物がある状態では出血死する前に窒息死しそうだし、肺を露出させればそれ自身で収縮は出来ないだろうし、肝臓には門脈が繋がっているし、といった感じでわりと誤りがある。ここまでやるなら徹底して欲しかったかも。

*1:心経の行動を見ていると殺す気満々、としか思えない。それだったら公務員はもっとコストのかからない対処法を取るだろう。