「神州纐纈城 (大衆文学館)」 国枝史郎

読んだのはこのバージョンではなく、桃源社版の方。題名作以外に「暁の鐘は西北より」も収録。
どちらも途中で終わっている。後者の方は、今後の展開について少し作者が補足しているが、前者は突然の中断である。作品の方向性は違うが「闇に用いる力学 赤気篇」がこうならないと良いなぁ。
京極夏彦以上に漢字の多用される文体*1であって、辞典を引き引き読むことになった。
で、内容なのだが、作者のイメージの趣くままに書かれた作品である、と言えるだろう。大事なところで場面転換して、全然違う話に跳んでみたり、描写を大幅に端折ってみたり、最初はついていくことが難しかった。しかし、慣れてくるとそのイメージを追体験していくことが心地よくなり、正直ストーリーなんてどうでも良くなってくる。赫く染められた纐纈、湖に浮かぶ城、富士教団神秘境、そして、突然挿入される「語り」。
完結していなくても歴史に残るには、それなりに理由があるということだろう。
一応書いておくが、レプラはこんな疾患ではなく、奔馬癩病なんてものは実在しない。

*1:まぁ書かれたのが大正だし。