瀬名秀明講演会

「小説と科学の新たな関係」
日時:10月31日(日)
    14:30〜16:00
場所:東北大学川内キャンパス A棟200番教室

行ってきました。なかなか話の上手い人だ、という印象。あと、愛知万博って実は面白いんでない。ロボットがいっぱいで。

初めて知った情報を箇条書き。
・お父さんは静岡県立大薬学部の鈴木康夫教授らしい。「タミフル」の開発に関わった人。
ペンネームの由来
  本名は鈴木なのに、ありふれているからということと、当時の角川がプッシュしていた鈴木光司とかぶるから、「パラサイト・イヴ (角川ホラー文庫)」のタイトルか名前のどちらかを変えろ、と編集者に言われて、出身の瀬名町からとった。これを勘違いしたNumberの編集長からアイルトン・セナの追悼記事を頼まれたが、断ったらしい。
・「BRAIN VALLEY〈上〉 (角川文庫)」では「面白さ」と「難しさ」を両立させよう、と思った。自分でアンケートを作って、実際に読者から、面白くて難しいという反応が返ってきたのに、編集者は理解してくれなかった。
・「八月の博物館 (角川文庫)」は自分では一番好きで、資料を700万円もかけて集めたのに回収できるほど売れなかった。
・作家は自分の名前を検索エンジンにかけて落ち込む。
アクトロイド

ここからは話の内容。抜けや誤りなどがあるだろうから、余り信用なさらぬ様。
・科学、理系離れと言われているが、そもそも現代はすべての分野において、関心が持てない時代ではないか。
・roboticsはロボット工学ではなく、ロボット学と訳すべきだ。20世紀型の「表現型⇔タンパク質⇔ゲノム」というゲノム科学だけでなく、「ロボット学」からヒトについて考えることが必要だろう。
・車が発明されて、車道というものが出来た様に、ロボットに対しても環境を整えてやれば良いのではないか。
・意識の持つメタ構造というものが、図らずも「フランケンシュタイン」や「RUR」といった作品に表れている。ロボット知能研究者はロボットを箱庭で遊ばせているだけではなかろうか、という問。来年出る本ではそのネタを扱っている。*1
ヒューマノイドロボットの普及には「キラーアプリ」が必要*2。しかし、現在の所存在しない。おそらくはhumanityこそがそれに当たるだろう。ここで言うhumanityとは寂しさを紛らわすもの。ヒト-ロボ-ヒトや、ヒト-ロボという関係が考えられる。
・科学者の研究テーマは自己の体験から出てくるものである。そして、優れた研究者はそれを普遍化する能力を持っている。
・中高の理科にはリアリティーが無い。そこを物語が担うことが出来るのではないか。
こんな感じ。他にもアジモフ和辻哲郎チェスタトン坂口尚などなど。「間柄の科学」というのはシステム論のことだろうか。

*1:デカルト」と「密室」か・・・。笠井潔っぽいなぁ。

*2:私としては、キラーアプリとしてのhumanityは「i-doloid」や「オルガスマシン」にあると思う。