「マンガ学への挑戦―進化する批評地図 NTT出版ライブラリーレゾナント003」 夏目房之介

マンガは誰のものか?という問から、マンガに関わる全ての言説を見通そうとする試み。
問の答えは、作者と読者の二項対立を止揚したところにある筈である。本書はそれをモデル化して提示した所で終わっている。確かに、最後に出てくる図の中に、すべてのマンガ語りが含まれている様に思う。「正確な意味理解」という言葉がひっかからなくもないが*1、『キマイラ』と「やおい」を読む限り、気づいているみたいだし。
何の気無しにマンガを読んでいる分には、確かにいろんな「読み」があるよね、ということでいいだろう。しかし、上述の問は著作権にからんでくる、という辺りが読んでてスリリングになってくる下り。自分の中にそういう視点が全く無かったものだから、ホント目から鱗であった。
少なくとも、マンガの「感想」を「語る」機会のあるマンガ読み*2なら必読の書だと思う。

そういえば、マンガ夜話を50万人が見ている、という数字には驚かされた。(視聴率としては1%にも満たないのだけれど)

*1:私は岡田的立場に近い。

*2:99%がそうだと思うが。