「DIVE!!(1) 前宙返り3回半抱え型」 森絵都

id:kaienさんの所で誉めていたから、読んでみた。古本屋では、この巻しか買えなかったが、読了後すぐさまbk1に続きを注文した。
内容は、非常にベタなスポ根ものである。登場時には凡庸な主人公が良き指導者とめぐりあい、その天賦の才を開花させていく。ライバルは秀才肌のサラブレットに、津軽から来た野性味あふれる海の男。
なんか挙げていっても王道ぶりしか分からないなぁ。とかく読むことをオススメする。読まないとこの燃えっぷりは伝わらない。

主人公のことを、嫉妬しつつも認めている友人の

でも、テレビや漫画じゃ、いつも最後に勝つのはトモ(主人公)みたいな無欲のアホ面なんだよ

という科白がある。
こういうキャラ造形というのは、「民話の思想 (中公文庫)」に出てくる、狂言や花咲か爺までさかのぼる事の出来る「またうど(完人)」という概念にたどりつけると思う。おとなしい性格で、それゆえ弱く、愚鈍である。しかし、おとなしいからこそ、勤勉であり、正直で親切でもある。かような善悪の二面性がどちらに振れようとも、「またうど」は「富」を得る。
要は、日本人は昔からこういう話が好きだったのね、ということ。