「ブルータワー」 石田衣良

SFと言うよりは、異世界往還モノのファンタジーと言った方がいいと思う。まとめるなら、主人公が意識だけ未来に飛ばされ、そこでナウシカになり、また現在に帰ってくる、という話。
一応は、その「異世界」というか、未来世界では、罹患したら致死率88%のインフルエンザが猛威をふるい、高さ2キロメートルの塔が立っていて、すばらしく高性能の携帯端末(ネコ)がいる訳である。このあたりのガジェットはとってもサイエンスである。
しかし、主人公がナウシカになる理由はすっとばされていて、そもそも何故に主人公の意識が未来に飛ぶのか、そして、なぜ対称性をもってキャラが配置されているのか、という所も説明がない。この辺りをこじつけてしまえるのがSFの醍醐味だ、と思うので少し残念である。

今、SFやファンタジーなど想像力に傾斜した小説は商売にならないといわれている。

とあとがきにあったが、いわゆるラノベって無視されてしまうのだろうか。それとも対象とする読者が違うということ?そう考えるなら、読んでて唖然とした「愛のメモリー」もアリなのかしらん。
最近読んだ、「審判の日」などでも感じたのだが、どうもこの手のキャラ造形はリアルに感じない。「壊れた世界」の住人の方がより親近感が湧くのだが、世代差なんだろうか。