「夜の童話 (POPLARコミックス)」紺野キタ

オーソドックスな、ほんわかする系のファンタジー短編集。だとばかり思っていたら、最後に結構びっくりする作品が入っていた。
中年の妻子がいるサラリーマン。家族仲は冷え切っており、彼にとって家は「要塞」である。そんな主人公が一つの願いを叶えてもらう。「初恋」を叶えてくれ、というのがその願いである。それから主人公は少女を幻視し始めて、会社でも、家でも充実した日々を送る、というのが大体のあらすじ。
日々の生活がツラくても、「私のために書かれた夜の童話」があれば良い、というモノローグで話は終わっているが、それを「ただそこにいて微笑んでくれる」少女と並べて同じものにしてしまった作者に脱帽である。