「グロテスク」作:桐野夏生 文藝春秋
「藪の中」の如く4人の主要な登場人物の一人称で物語が進んでいく。
各人の証言のずれはエゴイズム故に起きる。
題名通りにグロテスクな心の動きをこれでもかと言わんばかりに描写している。
容貌が良くても、出世を目指して努力しても、それらから逃亡しても全員が不幸となる。
唯一不幸になっていないのは、荒野の七人で早期結婚した人だけではないだろうか。
新年早々鬱な気分になった。

瑣末なツッコミを入れると、「わたし」はともかく他の人物がここまで詳細な手記を書けるわけないと思う。