「川の深さは」作:福井晴敏 講談社文庫
いろいろな読み方を可能とする作品であると思う。
川のイメージが繰り返されるのは、吉田秋生の「川よりも長くゆるやかに」や岡崎京子の「リバーズ・エッジ」からの影響だろう。
この話の中では、「川よりも」寄りのメタファーとして、用いられている。
オウム事件を新たな視点で見る、いわゆる社会派な所もあるし(つうかこれがメインのアイディアです)。
高村薫的なオヤジ好きな人にも配慮している。
結局の所、私は冒険活劇として消費してしまったわけであるが。
デビュー作である為か、欠点も目に付く。
情報の詰め込み方が、木に竹を継いだようで、京極堂シリーズなどと比べると見劣りする。特に、創(皮膚の連絡の断たれたwound)の治療の下りとかコンピューターウイルスの所とか。
あと解説にも書いてあったキャラ立ての未熟さみたいなものもある。
とはいえ、こういった欠点は、書き慣れてくれば良くなるものだと思うので(敢えて貴志祐介を例に挙げてみよう)、正月は、「ローレライ」を読もうと決意。

アポトーシスの綴りは、apoptosisであって、apotheosisではないと思うのであるが、ググッてみたところ1件だけ発見。
いずれにせよイタいミスではないかと思われる。