第九の日 The Tragedy of Joy

第九の日 The Tragedy of Joy

先生は勝手にケンイチに自己を与え、その自己を救済することもなく弄んでいるのです。なぜなのか私にはわかります。先生は選択できない自己を恐れているのです。だから生身の人間でなくロボットを選ぼうとした。先生はこうして話しているときでさえ表情を変えない。たぶん先生は本当の恋に落ちたことさえない。先生は自己の観念に囚われて、すべてを見失っています。早く目を醒まして下さい

科学は世界を変えなくてもいい。でも私たちは科学の論理を手放しちゃいけない。科学の論理が本当に大切なのは、たったひとりの患者さんの心を満たすときだから

 科学と小説の間。「第九の日」をそのまま推し進めると小説って書けなくなるんじゃぁと思っていたら、「決闘」では普通に物語してちょっと安心した。