神聖喜劇 (第1巻)

神聖喜劇 (第1巻)

学校出が一番いかん
戦地に連れて行っても
役立たずはたいがい
学校出のインテリじゃ
兵隊事は何一つ
まともにはやられんくせに
ずるける事と理屈を
捏ねまわす事だけは
人一倍よう知っとる

  • 背景 

 古本屋で100円コーナーにあったから買った。聞いたことがないタイトルであったが、「解題」によると、原作となった小説版『神聖喜劇』は『死霊』や『家畜人ヤプー』と並ぶ戦後文学の怪物なんだとか。
 これは原作も読んでみたい。 

  • あらすじ 

 太平洋戦争が始まって間もない1942年の一月。新聞記者の主人公は補充兵として教育召集される。厳しい訓練の様子と、旧制高校時代の回想がまざる形で物語は進んでいく。

  • 読み

 体力がなくたって、「知恵と勇気」でなんとかするというパターンはわりと好きなので、記憶力抜群の主人公が順法によって戦っていくのは面白い。ある意味、最近はやっているルール内での知恵比べに通じるものがあるかも。
 『刑務所の中』を思わせる細かい兵舎描写がマンガならではの魅力だろう。
 もう一つ面白かったのが、教師たちに詰問されているシーン。

 窓側にいる教師というコマが繰り返し出てくる。これは背中に光があると威圧感を感じるという効果を含んでいると思う。
 主人公が持ち前の博覧強記でついに教師たちを言い負かすクライマックスが以下の見開き。

 それぞれのフキダシの左側のネームが薄くなっている。背景の効果線は左右に光源があることを示し、ネームでのみ左から光が当たっているというコマになっている。また、そのネームに教師たちが押しつぶされそうになっている。
 つまり、元々あった生徒と教師という立場の差を主人公の語りで押し返すことを、本来の物理的な光はネームの色で表現して、フキダシと効果線は心理描写になるという逆転で表現している。