■
- 作者: 西原理恵子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/28
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 38回
- この商品を含むブログ (134件) を見る
離婚して娘を連れて故郷へ帰ってきた主人公と住民達の交流。
『新潮45』に連載されたものである。媒体の特性もあってか、これまでとはかなり雰囲気が違う意欲作だと思う。子供が雑草のように生きていくという一つの確立したパターンから、最近では上京当時のことや子育てをモチーフにした作品が続いていた。ところが今回は、明確に「老い」を意識した作品になっている。
まずは絵。表紙からも分かるが、目の位置が高い大人びた表情を持った主人公である。書店で見たとき、一瞬違う本かと思ってしまった。
そして構成、『いけちゃんとぼく』に引き続き、最後にサプライズが存在する。ありていに言ってしまうと、主人公が毎夜語りかけていた恋人は架空の存在だったというものである。そこに至るまでに、現在の主人公が傍観者でしかないことが不思議であった*1。それはこのラストでの反転を効果的にするためだったのである。
みっちゃん わたし くるってる?
そんなやったら この街の女はみんな 狂うとる
(中略)
これからは わたしも あんたも 好きにさせて もらお
最後に主人公とその友人が交わす会話であるが、たとえ「逃げ」であっても、どんな状況でも生きていくという前向きさがよく表れている。
『ヨイコノミライ』のラストで平松が包まれていた黒い影と、『パーマネント野ばら』のどこまでも続く海と空。まさに客観と主観の違いとしても捉えられようが、平松も別に不幸せではないんじゃない、というのが結論。
*1:このマンガ家はそういう線引きをしない。