『雷轟rolling thunder PAX JAPONICA』

勝負に勝つことで人は栄誉や賞賛を獲得しますが、同時に勝者であることによって敗れた者の悲惨や悔悟を背負うことにもなり、そして勝ち続けるという、さらに厳しい道を歩むことを余儀なくされます。人は敗れることによって勝者が負うべき様々な困難を回避し、敗者として後悔と自己憐憫に浸って生きるという、甘い誘惑に勝つことができない――それこそが敗者たる条件なのだ

というわけで、日本という国に勝ち続けることの困難を背負わせてみようという企画のノベライズである。
実質的な主人公として出てくる醐堂が、古き良き押井作品にでてくるオジサンであってなんとなく安心する。眼鏡を出す暇があったら、素麺とチョコレート以外にも何か食わせろというのが一番の感想なのだが。
それにしても、279ページある本のあとがきが、168ページに入っているのはどうなんだろう。小説部分は短編と中篇が一本ずつで、残りの100ページ分は、企画書と解説だというこの水増し感。決算期のどさくさに紛れて出版の運びとなったのではないだろうか。
まぁ、全貌が見えてくるまで気長に待とう。