『チーム・バチスタの栄光』

これは傑作。
中身は三部構成で、第一部は『医龍』+作者のエッセイみたいなノリで始まる。「ゆりかご」でまったりしつつも、あるある感があってそれなりに読ませる。
続いて第二部、いきなりギアがトップに入る。ここでは、伊良部先生*1を彷彿とさせるブッ飛んだ白鳥技官が大活躍である。良い意味でキャラクター小説化していて、読みながら何度も吹き出してしまった。
そして第三部では、医療過誤と医療事故以外に、悪意のある犯罪というものが存在するのではないか、という指摘など、社会派な終わり方を見せる。
リーダビリティは高いし、現役勤務医が書いただけあって、リアリティーも保たれている。例えば、わざわざ病理医にもスポットを当てているのはまさに『医龍』との差異だし。
一点だけ気になったのは、ミステリの必然としての殺人がギャグに押し流されてしまっている感がなくもないこと。まぁ、エンターテイメントとしての比重の問題だ、といえばそれまでだが。
ともあれ選評にもあったが、ぜひとも白鳥技官シリーズの続編を読んでみたい。

*1:もしくは群鴎刈人