『グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)』神林長平

戦闘妖精・雪風』は、全く報われない一方通行の三角直線関係の話だった訳であるが、本作はフォスに解説をさせることでそれに幅を持たせつつ、最終的には「複合生命体」とは愛*1だ、と喝破してみることで、零と雪風のハッピーエンドで終わっている。p307やp438でのフォスとブッカーの報われなさがなんともいえないが、それは「各自の錯覚世界」という言葉でも説明可能だろう。
前作でも匂わされていた通り、ヒトとジャムは基本的にねじれの関係にある。だがコンピューターを媒介することで、なんとか言葉による会話に成功する。それが割合肯定的にというか、フェアリーの更なる異界である「不可知戦域」からの帰還が、通過儀礼そのものの様に書かれているのは興味深い。よくわからない存在とでも、交流することで何らかのメリットを得られる、という結論になっているのか。
ジャムの正体については、最終章の「グッドラック」にて更なる考察がなされている。まさかここまで大きな氷山だとは思わなかった。うん、これぞSF。
手元にあるのは二刷であるが、p74に雲風→雪風という誤植があった。なんか雲風と言われると、戦闘機の鋭角ではなく、もこもこした感じがする。革ジャンとダウンジャケットの違いみたいな?

*1:これは多分フィリアのこと