「鱗姫 (小学館文庫)」嶽本野ばら

本文中にも出てくる通り、楳図かずおを試みたみたいである。雰囲気は確かにそのまんま。ギョエーもしっかり出てくる。
ただ、その雰囲気に敢えて付け加えたとおぼしい鱗病に関する説明は不要だったかと。まさに「よく解ったような解らないような感じ」にしかなっていない。個々のセンテンスが正しくとも、繋がりがおかしいのである。
閉塞感あふれる唐突な終わり方は、あくまで自意識を問題にしている作者らしくもある。普通のホラーだったら、そこから社会との戦いに突入する*1、と思う。
あと、本書は「ああっ、お兄さま」という方に最適(本当)でもある。

*1:アラバスター」とか