「海の底」 有川浩

大人パートの組織と個人のジレンマ(横山秀夫っぽさとも言える)、子供と大人の「責任感」の差、子供同士での弱いものいじめ、とそれぞれの立場の人間がレガリス襲来という危機に直面してとった行動が描かれる。
前作でもそうだったのだが、子供と大人が対立したときに、基本的に大人の方のロジックが優れていて、そちらにすべて回収されていく様子が対象年齢を上げているかもしれない。つまり、大きなお友達の方に、もしくは背伸びしたい人に受けが良さそうな気がする。
ひょうひょうとして、あまり内面が語られることのない冬原の私生活については、「野性時代」に掲載された「クジラの彼」で読める。本作のオチに勝るとも劣らないラブストーリーっぷりだった。
紙が光を反射して読みにくかったのだけど、材質をわざわざ前作と変えた理由は何だったんだろうか。